ハワース宿の名前のない部屋に泊まり


 イギリスのハワースという村を訪ねたとき、私はそこのB&B(朝食付きの民宿)に1週間宿泊しました。ハワースは日帰り観光客の多い小さな村で、2泊ほどでこの村や周辺の町の観光ができます。 私はB&Bに泊まる時は日本から和菓子を手土産として持って行くことにしています。この時も見た目が美しい水ようかんを用意して行きました。宿の主人のデイビッドは和菓子を手渡すと、喜んでその場で包み紙をほどいてくれました。客から贈り物をもらうことはめずらしいのでしょう。

日本に帰ってから帰国を知らせるEメールを送ると、この水ようかんはまだ少し残してあると教えてくれました。宿の4つの部屋にはこの村の有名な家族の名前がついていました。私の部屋はエミリー、隣はブランウェル、反対のお隣はシャーロットで、その向こうがアンという具合に兄弟や姉妹の名前がドアについていました。私は4日間エミリー・ルームを使わせてもらいました。 

後半の滞在は屋根裏部屋みたいなところに移動となりました。(これは最終日にチェックアウトの時間をオーバーしても部屋を使えるようにとの配慮からです。)私の新しい部屋は天上が斜めになっていて頭をぶるけることもありましたが、壁が水色に塗られていてバスルームにはバスタブのあるかわいい部屋でした。天井にある天窓がめずらしくて私は何度も開け閉めして遊びました。

しかしこの部屋には大きな問題があったのです。  

翌日の朝食でのことです。私「デイビッド、わたくしには大きな問題があるのをお気づきになっていて?」デイビッド「いや、知らないよ。問題があるだって? それは何だい?」私「わたくしのお部屋にはお名前がありませんのよ!」デイビッド「君は部屋に名前がほしいのかい? じゃあ君がつければいいよ」このようなやり取りの後、私はあの家族の中で唯一欠けていた父親の名前「パトリック」と書いた紙をドアにかけました。 

帰国後にデイビッドから届いたEメールには、「近いうちにパトリックの名札を用意しておくよ」と書かれていました。